郷照寺(第78番札所)完全ガイド|厄除け・歴史・文化財・アクセス情報
香川県綾歌郡宇多津町にある郷照寺(ごうしょうじ)は、四国八十八箇所霊場第七十八番札所として、また「厄除うたづ大師」として全国から多くの参拝者が訪れる歴史ある寺院です。仏光山(ぶっこうざん)広徳院(こうとくいん)と号し、本尊は阿弥陀如来。四国霊場で唯一、時宗と真言宗の両宗を奉ずる特異な寺院として知られています。
本記事では、郷照寺の歴史から伽藍、文化財、参拝のポイント、交通アクセスまで、訪れる前に知っておきたい情報を網羅的に解説します。
郷照寺の歴史
創建から古代の歴史
郷照寺の創建は奈良時代に遡ります。神亀2年(725年)、高僧・行基菩薩がこの地に「道場寺」を開創したのが始まりとされています。行基は奈良時代を代表する僧侶で、民衆への仏教布教と社会事業に尽力した人物として知られており、全国各地に寺院や橋、ため池などを築きました。
平安時代の大同2年(807年)には、弘法大師空海が42歳の厄年の際にこの寺を訪れ、自らの像を刻んで厄除けの誓願を立てたと伝えられています。この故事が、郷照寺が「厄除うたづ大師」として広く信仰を集めるようになった起源となりました。空海が自刻した大師像は、今も厄除けの本尊として多くの人々の信仰を集めています。
時宗への改宗と郷照寺への改称
鎌倉時代の正応元年(1288年)、時宗の開祖である一遍上人がこの地を訪れました。一遍上人は踊り念仏で知られる時宗を開いた僧侶で、全国を遊行しながら念仏を広めました。一遍上人はこの寺を踊り念仏の道場とし、寺号を「道場寺」から「郷照寺」に改めました。
この時から郷照寺は時宗の寺院となり、真言宗との両宗を奉ずる特異な形態を持つようになりました。四国八十八箇所霊場の中で、時宗の寺院はこの郷照寺のみであり、これが大きな特徴となっています。
戦国時代の受難と江戸時代の再興
戦国時代の天正年間(1573年~1592年)、郷照寺は兵火によって焼失するという受難に遭いました。当時の戦乱により、多くの寺院が被害を受けましたが、郷照寺もその例外ではありませんでした。
江戸時代に入り、寛文4年(1664年)、高松藩初代藩主の松平頼重によって郷照寺は再興されました。松平頼重は水戸黄門として知られる徳川光圀の兄にあたる人物で、文化事業にも熱心でした。この再興により、郷照寺は現在の姿の基礎が築かれることになります。
近代以降の郷照寺
明治時代の廃仏毀釈の影響を受けながらも、郷照寺は地域の信仰の中心として存続しました。昭和以降も四国霊場第七十八番札所として、また厄除けの寺として多くの参拝者を迎え続けています。
現代では、境内から瀬戸大橋を望むことができる景観の良さでも知られ、四国遍路の巡礼者だけでなく、観光客も訪れる名所となっています。平成27年(2015年)には「四国遍路」が日本遺産に認定され、郷照寺もその構成文化財として登録されています。
伽藍と境内の見どころ
本堂
郷照寺の本堂は、本尊である阿弥陀如来を安置する中心的な建物です。阿弥陀如来は西方極楽浄土の教主として、念仏を唱える者を救済するとされる仏様で、時宗の信仰の中心でもあります。本堂内では、厳かな雰囲気の中で参拝することができます。
本堂の前には納経所があり、御朱印や御影をいただくことができます。四国遍路の巡礼者にとって、納経は重要な儀式の一つです。
大師堂
大師堂には、弘法大師空海が自ら刻んだとされる大師像が安置されています。この像は厄除けの誓願が込められており、「厄除うたづ大師」として信仰の対象となっています。特に厄年の方や、厄除けを願う参拝者が多く訪れます。
大師堂での参拝は、四国遍路において本堂参拝と並んで重要な儀式です。多くの遍路者が、ここで読経し、厄除けと道中の安全を祈願します。
回遊式庭園
郷照寺の境内には、美しい回遊式庭園があります。江戸時代の再興時に整備されたと考えられるこの庭園は、四季折々の景観を楽しむことができます。池を中心とした庭園は、禅の精神を表現した静寂な空間となっており、参拝者の心を癒します。
春には桜、初夏には新緑、秋には紅葉と、季節ごとに異なる表情を見せる庭園は、多くの写真愛好家にも人気のスポットです。
境内からの眺望
郷照寺は宇多津町の高台に位置しており、境内からは瀬戸内海と瀬戸大橋を一望することができます。天気の良い日には、坂出の街並みや瀬戸内海の島々まで見渡すことができ、その景観の美しさは訪れる人々を魅了します。
この眺望は、郷照寺ならではの魅力の一つであり、参拝だけでなく景色を楽しむために訪れる人も少なくありません。特に夕暮れ時の瀬戸大橋は絶景です。
その他の建造物
境内には、鐘楼、手水舎、山門など、寺院に欠かせない建造物が配置されています。それぞれの建物は、江戸時代以降の再興時に整備されたもので、伝統的な寺院建築の美しさを今に伝えています。
文化財
木造阿弥陀如来坐像
郷照寺の本尊である木造阿弥陀如来坐像は、重要な文化財として保存されています。平安時代後期から鎌倉時代初期の作とされ、優美な定印を結ぶ姿は、阿弥陀信仰の深さを物語っています。
この仏像は、時宗の教えである念仏往生の信仰を象徴するものであり、郷照寺の歴史と信仰の中心となっています。
弘法大師自刻像
大師堂に安置されている弘法大師像は、空海が42歳の厄年に自ら刻んだと伝えられる貴重な像です。厄除けの誓願が込められたこの像は、1200年以上にわたって人々の信仰を集めてきました。
実際に空海が彫ったかどうかは学術的には議論がありますが、古くから厄除けの霊験あらたかな像として信仰されてきた歴史的価値は高く評価されています。
古文書・記録類
郷照寺には、江戸時代の再興に関する文書や、歴代住職の記録、参拝者の奉納物など、多くの歴史資料が保存されています。これらの資料は、宇多津町の歴史や四国遍路の歴史を研究する上で貴重な史料となっています。
庭園
回遊式庭園そのものも、文化財的価値を持つ重要な資産です。江戸時代の造園技術を今に伝えるこの庭園は、香川県内でも貴重な歴史的庭園の一つとして評価されています。
厄除け信仰と年中行事
厄除うたづ大師としての信仰
郷照寺は「厄除うたづ大師」として、特に厄除けの霊場として広く知られています。弘法大師が自らの厄年に厄除けの誓願を立てたという故事から、厄年を迎える人々が全国から参拝に訪れます。
男性の厄年(25歳、42歳、61歳)、女性の厄年(19歳、33歳、37歳)の方々が、厄除け祈願のために訪れることが多く、特に本厄の前年(前厄)や本厄の年には多くの参拝者で賑わいます。
主な年中行事
郷照寺では、年間を通じて様々な法要や行事が行われています。
- 正月三が日:初詣の参拝者で賑わい、新年の厄除け祈願が行われます
- 節分会:2月3日前後に行われる節分の法要で、厄除けの祈願が行われます
- 春・秋の彼岸会:先祖供養の法要が営まれます
- 弘法大師御影供:毎月21日には大師を偲ぶ法要が行われます
これらの行事の際には、特別な御朱印が授与されることもあり、遍路者や参拝者に人気です。
四国八十八箇所霊場としての郷照寺
第78番札所の位置づけ
郷照寺は四国八十八箇所霊場の第七十八番札所として、涅槃の道場である讃岐国(香川県)の札所の一つです。第77番札所の道隆寺から約7km、第79番札所の天皇寺(高照院)まで約7kmの距離にあります。
涅槃の道場は、四国遍路の最終段階であり、悟りの境地に近づく重要な区間とされています。郷照寺での参拝は、遍路の完成に向けた大切な一歩となります。
参拝の作法
四国遍路の正式な参拝作法は以下の通りです:
- 山門で一礼:境内に入る前に合掌一礼します
- 手水舎で清める:手と口を清めます
- 鐘楼で鐘をつく:参拝前に鐘をつきます(帰りはつきません)
- 本堂で参拝:灯明、線香、納札、賽銭を納め、経を読みます
- 大師堂で参拝:本堂と同様に参拝します
- 納経所で納経:御朱印をいただきます
郷照寺では、本尊の阿弥陀如来への参拝と、大師堂での弘法大師への参拝の両方が重要です。
時宗と真言宗の両宗について
郷照寺の最大の特徴は、時宗と真言宗の両宗を奉ずる点です。これは四国霊場の中でも唯一の形態です。
真言宗は、弘法大師空海が開いた密教の宗派で、即身成仏を説きます。四国八十八箇所霊場の大部分は真言宗の寺院です。
時宗は、一遍上人が開いた浄土教系の宗派で、踊り念仏と「南無阿弥陀仏」の念仏により、誰もが平等に往生できると説きます。
この両宗が共存する郷照寺は、日本仏教史上でも珍しい存在であり、宗教学的にも興味深い寺院となっています。
交通アクセス
公共交通機関でのアクセス
電車の場合
- JR予讃線「宇多津駅」から徒歩約20分(約1.5km)
- 宇多津駅は、高松駅から快速で約20分、岡山駅から特急で約50分の距離です
- 駅からタクシーを利用する場合は約5分、料金は1,000円前後です
バスの場合
- コミュニティバス「宇多津町福祉バス」が利用可能です(運行日・時刻に注意)
- 最寄りのバス停から徒歩数分です
自動車でのアクセス
高速道路利用の場合
- 瀬戸中央自動車道「坂出IC」から約10分(約5km)
- 高松自動車道「善通寺IC」から約20分(約12km)
一般道の場合
- 国道11号線から県道33号線経由でアクセス可能
- カーナビには「郷照寺」または住所「香川県綾歌郡宇多津町1435」を入力
駐車場情報
郷照寺には参拝者用の無料駐車場があります。普通車約30台が駐車可能です。大型バスも駐車可能なスペースがありますが、事前に連絡することをおすすめします。
繁忙期(正月三が日、大型連休など)は混雑することがあるため、公共交通機関の利用も検討してください。
遍路道でのアクセス
前の札所から(第77番 道隆寺)
- 距離:約7km
- 徒歩:約1時間40分
- 遍路道は、多度津町から宇多津町へと続く比較的平坦な道です
次の札所へ(第79番 天皇寺)
- 距離:約7km
- 徒歩:約1時間40分
- 坂出市方面へ向かう道で、途中に聖通寺山があります
周辺の見どころ
宇夫階神社(うぶしなじんじゃ)
郷照寺のすぐ近くにある古社で、地域の氏神として信仰されています。郷照寺参拝の際に合わせて訪れる人も多い神社です。神仏習合の歴史を感じることができる場所でもあります。
浄泉寺
宇多津町内にある浄土宗の寺院で、美しい庭園で知られています。郷照寺からは徒歩圏内にあり、時間があれば訪れてみる価値があります。
宇多津町の町並み
宇多津町は古くから瀬戸内海の港町として栄えた歴史ある町です。古い町並みが残る地域もあり、散策を楽しむことができます。また、近年は新しい商業施設も増え、伝統と現代が共存する町となっています。
瀬戸大橋
郷照寺の境内からも見える瀬戸大橋は、本州と四国を結ぶ壮大な橋です。近くには瀬戸大橋記念公園もあり、橋の全景を眺めることができます。
ゴールドタワー
宇多津町のランドマークである158mの展望タワーです。最上階の展望室からは、瀬戸内海や讃岐平野を360度見渡すことができます。郷照寺から車で約5分の距離です。
参拝時の注意事項とマナー
参拝時間
- 納経所の受付時間:通常7:00~17:00(季節により変動あり)
- 境内への立ち入りは基本的に自由ですが、早朝・夜間の参拝は控えめに
服装と持ち物
- 遍路装束での参拝が正式ですが、普段着でも問題ありません
- ただし、露出の多い服装や派手な服装は避けましょう
- 高台にあるため、歩きやすい靴での参拝をおすすめします
写真撮影
- 境内での写真撮影は基本的に可能ですが、本堂内部などは撮影禁止の場合があります
- 他の参拝者の迷惑にならないよう配慮しましょう
- 商用利用の場合は事前に許可が必要です
その他のマナー
- 境内は禁煙です
- ペットの同伴は原則禁止です(盲導犬等の補助犬は除く)
- 大声での会話は控えめに、静かに参拝しましょう
- ゴミは必ず持ち帰りましょう
前後の札所
第77番札所 道隆寺(どうりゅうじ)
- 所在地:香川県仲多度郡多度津町北鴨1-3-30
- 本尊:薬師如来
- 宗派:真言宗醍醐派
- 距離:郷照寺まで約7km
桃山様式の本堂が美しい寺院で、眼病平癒の信仰で知られています。
第79番札所 天皇寺(てんのうじ)高照院
- 所在地:香川県坂出市西庄町1713
- 本尊:十一面観世音菩薩
- 宗派:真言宗御室派
- 距離:郷照寺から約7km
崇徳上皇ゆかりの寺院で、白峯寺とともに崇徳上皇の霊を慰める寺として知られています。
まとめ
郷照寺は、四国八十八箇所霊場第七十八番札所として、また「厄除うたづ大師」として、1300年近い歴史を持つ由緒ある寺院です。行基による創建、弘法大師による厄除けの誓願、一遍上人による時宗への改宗という、日本仏教史を代表する三人の高僧と深い関わりを持つ稀有な寺院でもあります。
時宗と真言宗の両宗を奉ずる四国霊場唯一の寺院という特異性、美しい回遊式庭園、境内から望む瀬戸大橋の絶景など、歴史的価値と景観美を兼ね備えた郷照寺は、四国遍路の巡礼者だけでなく、一般の観光客にも訪れる価値のある場所です。
宇多津町の高台に位置し、JR宇多津駅から徒歩圏内という交通の便の良さも魅力の一つです。第77番道隆寺から第79番天皇寺へと続く遍路道の途中に位置し、四国遍路の旅程においても重要な札所となっています。
厄除けを願う方、四国遍路を志す方、歴史ある寺院を訪ねたい方、瀬戸内海の美しい景色を楽しみたい方、それぞれの目的で郷照寺を訪れてみてはいかがでしょうか。きっと心に残る参拝体験となることでしょう。
