久能山東照宮完全ガイド|国宝社殿・歴史・アクセス・参拝情報の全て
久能山東照宮とは
久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)は、静岡市駿河区根古屋に鎮座する神社で、江戸幕府を開いた徳川家康公をご祭神としてお祀りする全国東照宮の創祀です。駿河湾を望む久能山の南斜面に位置し、国宝に指定された絢爛豪華な社殿は、江戸時代初期の建築技術と芸術の粋を集めた傑作として高く評価されています。
徳川家康公は、天文11年(1542年)12月26日に三河国岡崎城(現在の愛知県岡崎市)でお生まれになり、あらゆる艱難辛苦を乗り越えて天下統一を成し遂げ、征夷大将軍として江戸幕府を開きました。戦乱の世に終止符を打ち、江戸時代260余年にわたる「泰平の世」の礎を築かれ、学問、産業、文化の基礎を確立し、近世日本の発展に偉大な功績を残されました。
晩年を駿府(現在の静岡市葵区)で大御所として過ごされた家康公は、元和2年(1616年)4月17日に75年の生涯を大成されました。亡くなる直前、家康公は家臣たちに「遺骸は久能山に埋葬すること」を遺命として託されました。二代将軍徳川秀忠公は直ちにそれを実行し、久能山に家康公を祀る神社を造営することを発令しました。これが久能山東照宮の始まりです。
久能山の歴史
久能山の歴史は、徳川家康公よりはるか以前に遡ります。推古天皇の時代、久能忠仁が久能寺を建立したことが久能山の名の由来とされています。平安時代には、補陀洛山久能寺として観音信仰の霊場として栄えました。
戦国時代に入ると、久能山は軍事的要衝として注目されるようになります。永禄11年(1568年)、駿河国に侵攻した武田信玄が久能寺を清水市(現在の静岡市清水区)の鉄舟寺に移し、久能山に城砦を築きました。その後、武田氏の滅亡後は徳川氏の支配下に入り、家康公の重臣である中村一氏が城主を務めました。
家康公自身も久能山の地形と眺望を高く評価しており、駿府城での隠居生活の際には、しばしば久能山を訪れていたと伝えられています。駿河湾を一望できる絶景と、三方を海と崖に囲まれた天然の要害という地形が、家康公が自らの埋葬地として久能山を選んだ理由の一つと考えられています。
久能山東照宮の創建と日光東照宮との関係
元和2年(1616年)4月17日に駿府城で薨去された徳川家康公の遺骸は、遺命に従って直ちに久能山に運ばれ、同年4月19日に埋葬されました。二代将軍徳川秀忠公は、父君を祀る壮麗な神社の造営を命じ、当時の最高の技術と芸術を集めて、わずか1年7ヶ月という驚異的な速さで社殿を完成させました。元和3年(1617年)12月に東照社として創建され、正保2年(1645年)に宮号を賜り東照宮となりました。
久能山東照宮は、日光東照宮に先駆けて造られた最初の東照宮です。日光東照宮は元和3年(1617年)に創建されましたが、現在の豪華な社殿は寛永13年(1636年)に三代将軍徳川家光によって大規模に造り替えられたものです。したがって、久能山東照宮の社殿は、日光東照宮の現存する社殿よりも約20年早く完成しており、日光東照宮の建築様式に大きな影響を与えたと考えられています。
家康公の遺言には「遺骸は久能山に納め、葬儀は江戸の増上寺で行い、位牌は三河国の大樹寺に納め、一周忌が過ぎたならば日光山に小堂を建てて勧請せよ」とあったとされています。これにより、久能山は家康公の遺骸が実際に埋葬された場所として、日光山とは異なる特別な意味を持つ聖地となっています。
国宝御社殿の建築美
久能山東照宮の社殿は、平成22年(2010年)12月に本殿・拝殿・石の間が国宝に指定されました。これは静岡県で初めての国宝建造物指定であり、江戸時代初期の権現造建築の代表作として、建築史上極めて重要な位置を占めています。
権現造の様式
久能山東照宮の社殿は「権現造」と呼ばれる建築様式で造られています。権現造とは、本殿と拝殿を石の間(相の間)で連結した複合社殿形式で、徳川家康公が東照大権現として神格化されたことから、この名称が生まれました。本殿、石の間、拝殿が一体となって構成される権現造は、久能山東照宮と日光東照宮によって完成された様式であり、後の神社建築に大きな影響を与えました。
絢爛豪華な装飾
社殿全体には、極彩色の彫刻や漆塗り、金箔が施され、まさに絢爛豪華という言葉がふさわしい美しさを誇ります。本殿の内部には、狩野派の絵師による壁画や天井画が描かれており、江戸時代初期の芸術の粋を集めた空間となっています。
彫刻には、龍、鳳凰、麒麟などの霊獣や、牡丹、菊などの花卉、中国の故事に基づく人物像など、多様なモチーフが用いられています。これらの彫刻は、単なる装飾ではなく、家康公の徳を讃え、東照宮の神聖さを表現する象徴的な意味を持っています。
大改修による復元
平成14年(2002年)から平成21年(2009年)まで、50年に一度の大改修が行われました。この7年間にわたる修復工事により、創建当時の絢爛豪華な姿が蘇りました。漆の塗り直し、金箔の押し直し、彫刻の彩色の復元など、伝統的な技法を用いた丁寧な修復作業により、400年前の職人たちの技術と美意識を現代に伝えています。
境内のご案内
久能山東照宮の境内には、国宝の御社殿をはじめ、数多くの重要文化財や見どころがあります。
表参道の1159段の石段
久能山東照宮への表参道は、海岸から続く1159段の石段で知られています。この石段は、曲がりくねった急勾配の道で、登るのは相当な体力を要しますが、途中から見える駿河湾の眺望は絶景です。石段を登りきった先には、楼門が待ち構えており、達成感とともに神域への入口を迎えることができます。
石段の数「1159」は「いちいちごくろうさん」と語呂合わせで覚えられることもありますが、実際には自然の地形に合わせて造られた結果この段数になったとされています。
楼門(重要文化財)
表参道を登りきると現れる楼門は、重要文化財に指定されています。朱塗りの鮮やかな二階建ての門で、左右には随身像が安置されています。楼門をくぐると、そこから先は神域となり、神厳な雰囲気が漂います。
神廟(家康公の墓所)
本殿の背後、久能山の山頂付近には、徳川家康公の遺骸が実際に埋葬されている神廟があります。石造りの宝塔の下に家康公が眠っておられ、この地が久能山東照宮の最も神聖な場所となっています。神廟は一般公開されていませんが、その存在が久能山東照宮を単なる神社ではなく、家康公の霊廟としての特別な意味を持たせています。
久能山東照宮博物館
境内には久能山東照宮博物館があり、徳川家康公の遺品をはじめ、歴代将軍の武器・武具、刀剣、書画、服飾品など、徳川家ゆかりの貴重な品々が収蔵・展示されています。特に家康公が実際に使用した太刀や具足、日常品などは、家康公の人となりを偲ぶ上で貴重な資料です。
国宝や重要文化財を含む約2,000点の収蔵品があり、常時展示替えを行いながら公開されています。博物館の見学は、久能山東照宮参拝の際にぜひ訪れたいスポットです。
その他の見どころ
境内には、神楽殿、神饌所、神庫など、多くの建造物が重要文化財に指定されており、それぞれに江戸時代初期の建築技術と美意識を見ることができます。また、境内からは駿河湾や富士山を望むことができ、自然景観も久能山東照宮の魅力の一つとなっています。
日本平ロープウェイでのアクセス
久能山東照宮へのアクセス方法は主に3つありますが、最も人気があるのが日本平ロープウェイを利用する方法です。
日本平ロープウェイの魅力
日本平山頂と久能山東照宮を結ぶ日本平ロープウェイは、全長1,065メートル、高低差179メートルを約5分で結びます。ゴンドラからは、駿河湾、清水港、富士山、南アルプスなど、360度の大パノラマを楽しむことができます。
特に晴れた日には、眼下に広がる青い駿河湾と雄大な富士山の組み合わせは、まさに絶景です。空中散歩を楽しみながら久能山東照宮に向かう体験は、表参道の石段を登るのとはまた違った趣があります。
ロープウェイ利用のメリット
日本平ロープウェイを利用する最大のメリットは、1159段の石段を登る必要がないことです。高齢の方や小さなお子様連れの家族でも、気軽に久能山東照宮を参拝することができます。また、日本平山頂には日本平夢テラスという展望施設もあり、合わせて観光を楽しむことができます。
ロープウェイは15分間隔で運行しており、待ち時間も少なく便利です。ただし、繁忙期には混雑することもあるので、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。
交通アクセスと参拝情報
久能山東照宮へのアクセス方法
久能山東照宮へのアクセス方法は、主に以下の3つがあります。
1. 日本平ロープウェイ利用
- JR静岡駅からバスで約40分、日本平ロープウェイ山頂駅下車
- ロープウェイで約5分、久能山駅下車、徒歩すぐ
- 車の場合は日本平山頂に無料駐車場あり
2. 表参道(石段)利用
- JR静岡駅からバスで約40分、久能山下バス停下車
- 1159段の石段を登って約20〜30分
- 近くに有料駐車場あり
3. 裏参道利用
- 日本平側から徒歩で約15分
- 比較的平坦な道のりですが、一般的には利用者が少ない
拝観料のご案内
- 社殿拝観料:大人500円、小中学生200円
- 博物館との共通券:大人800円、小中学生300円
- ロープウェイ料金(往復):大人1,250円、小人630円
参拝時間
- 4月〜9月:午前9時〜午後5時
- 10月〜3月:午前9時〜午後4時
- 年中無休(ただし、天候等により変更の場合あり)
所要時間の目安
- 社殿参拝のみ:約30分
- 社殿参拝+博物館見学:約60分
- ロープウェイ利用+社殿参拝+博物館見学:約90分
- 石段登り+社殿参拝+博物館見学:約120分
ご祈祷と授与品
ご祈祷について
久能山東照宮では、家内安全、商売繁盛、交通安全、学業成就、厄除けなど、様々なご祈祷を受け付けています。ご祈祷は予約不要で、受付時間内に社務所にて申し込むことができます。
徳川家康公は、学問、産業、文化の基礎を確立された方として知られており、特に立身出世や開運招福のご利益があるとされています。人生の節目や新しい事業の開始などに、ご祈祷を受ける参拝者が多く訪れます。
授与品
久能山東照宮では、様々な授与品が用意されています。
- 御朱印:参拝の記念として人気があります。久能山東照宮オリジナルの御朱印帳も授与されています。
- お守り:家内安全、交通安全、学業成就など、目的に応じた各種お守りがあります。
- 絵馬:願い事を書いて奉納することができます。
- 御神札:家庭の神棚にお祀りするための御神札も授与されています。
参拝の作法
神社参拝には基本的な作法があります。久能山東照宮を参拝する際も、以下の作法を守って心を込めてお参りしましょう。
鳥居のくぐり方
鳥居は神域への入口です。鳥居をくぐる前に一礼し、参道の中央は神様の通り道とされているので、端を歩くようにします。
手水の作法
- 右手で柄杓を持ち、左手を清めます
- 左手に柄杓を持ち替えて、右手を清めます
- 再び右手に持ち替え、左手に水を受けて口をすすぎます
- もう一度左手を清めます
- 柄杓を立てて柄の部分に水を流し、元の位置に戻します
拝殿での参拝
- 賽銭箱の前で軽く一礼します
- お賽銭を静かに入れます
- 鈴があれば鳴らします
- 二拝二拍手一拝(2回深くお辞儀、2回拍手、1回深くお辞儀)の作法でお参りします
- 最後に軽く一礼して退きます
周辺観光スポット
久能山東照宮を訪れた際には、周辺の観光スポットも合わせて楽しむことができます。
日本平夢テラス
日本平山頂にある展望施設で、富士山、駿河湾、南アルプス、伊豆半島など、360度の大パノラマを楽しめます。建築家・隈研吾氏が設計した美しい木造建築も見どころです。
清水港・エスパルスドリームプラザ
清水港周辺には、エスパルスドリームプラザという商業施設があり、寿司や海鮮料理を楽しめるレストラン、お土産店、清水すしミュージアムなどがあります。
三保松原
世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一つである三保松原は、富士山の絶景スポットとして有名です。久能山東照宮から車で約30分の距離にあります。
駿府城公園
徳川家康公が晩年を過ごした駿府城の跡地に整備された公園です。家康公の歴史を辿る上で、久能山東照宮と合わせて訪れたいスポットです。
久能山東照宮の年間行事
久能山東照宮では、一年を通じて様々な祭典や行事が行われています。
主な年間行事
- 1月1日:歳旦祭
- 2月17日:祈年祭
- 4月17日:例祭(最も重要な祭典で、徳川家康公の命日に行われます)
- 5月17日:春季大祭
- 9月17日:秋季大祭
- 11月23日:新嘗祭
- 12月31日:除夜祭
特に4月17日の例祭は、徳川家康公の薨去された日に行われる最も重要な祭典で、多くの参拝者が訪れます。
久能山東照宮の文化財
久能山東照宮には、国宝、重要文化財をはじめ、多くの貴重な文化財が保存されています。
国宝
- 本殿、石の間、拝殿(建造物)
重要文化財
- 楼門、神楽殿、神饌所、神庫など(建造物)
- 太刀 銘真恒、太刀 銘光忠など(工芸品)
- 徳川家康関係資料(古文書)
これらの文化財は、江戸時代初期の技術と芸術の水準の高さを示すとともに、徳川家康公と徳川家の歴史を物語る貴重な資料となっています。
まとめ
久能山東照宮は、徳川家康公を祀る全国東照宮の創祀として、日本の歴史において極めて重要な位置を占める神社です。国宝に指定された絢爛豪華な社殿は、江戸時代初期の建築技術と芸術の粋を集めた傑作であり、日光東照宮の建築にも大きな影響を与えました。
駿河湾を望む久能山の絶景、1159段の石段、日本平ロープウェイでの空中散歩、久能山東照宮博物館の貴重な展示品など、見どころは多岐にわたります。歴史好きの方はもちろん、建築や美術に興味のある方、自然景観を楽しみたい方など、様々な目的で訪れる価値のある場所です。
静岡市を訪れた際には、ぜひ久能山東照宮に足を運び、徳川家康公の偉業を偲びながら、国宝の社殿の美しさと駿河湾の絶景を堪能してください。参拝を通じて、江戸時代260余年の泰平の世を築いた家康公の精神に触れることができるでしょう。
