天津司神社(山梨県甲府市)完全ガイド|日本最古の人形芝居と国重要無形民俗文化財「天津司舞」の全て
天津司神社とは
天津司神社(あまつかさじんじゃ)は、山梨県甲府市小瀬町に鎮座する歴史ある神社です。往古より小瀬町の鎮守として地域の人々に崇敬され、日本文化史上きわめて貴重な「天津司舞」という伝統芸能を今日まで伝承してきました。
この神社が特に注目される理由は、わが国最古の人形芝居とも称される「天津司舞」が、昭和51年(1976年)に国の重要無形民俗文化財に指定されたことにあります。古典的神事芸能として、また日本の伝統芸能の始祖的存在として高く評価され、日本遺産としての価値を持つ貴重な文化財です。
天津司神社の御祭神と由緒
御祭神
天津司神社には、以下の神々が祀られています。
- 経津主神(ふつぬしのかみ)
- 黄幡神(きはたのかみ)
- 磐筒男神(いわつつおのかみ)
- 磐筒女神(いわつつめのかみ)
- 根裂神(ねさくのかみ)
- 磐裂神(いわさくのかみ)
- 豹尾神(ひょうびのかみ)
これらの神々は、天津神として崇敬され、地域の守護神として信仰を集めてきました。
創建の由緒と伝説
天津司神社の創建については、古来より興味深い伝説が伝えられています。
古来よりの申し伝えによれば、この地がまだ開けず草沼であった頃、天津神十二神が天降りして舞楽を奏したとされています。その後、二神は天上に昇り、一神は西油川村の古井戸(鏡の井)に没したと伝わります。この井戸は祭日になると神の姿が映るとされ、「鏡の井」と呼ばれました。
残る九神はなおも舞楽を続け、やがてこの地が開けて人里となりました。その舞楽を見た人々が、神々の姿を模写して九体の神像を造り、神紋を九曜の星とし、毎年神事として舞楽を奉納するようになったのが「天津司舞」の始まりとされています。
別の伝承では、「昔、小瀬の里が開けないころ、12神が天から下り舞楽を奏したが、その後2神は天に帰り、1神は西油川の鏡池に飛び入ってなくなった。しかし残る9神が舞楽を奏し続け、小瀬の里が開かれたので、役人がこの神を模して神像をつくり、舞楽の始まりとなった」とも語られています。
歴史的記録
天津司舞は大永二年(1522年)以前から伝承されていることが確認されています。大永二年八月には、武田民部少輔信乗による社殿修造の棟札が残されており、この時代にはすでに神社と舞が確立していたことを示しています。
この棟札は現在も保存されており、天津司神社の歴史を証明する重要な史料となっています。
国重要無形民俗文化財「天津司舞」
天津司舞の概要
天津司舞は、天津司神社に古くから伝承される日本最古の人形芝居であり、偶人劇(人形劇)の始祖的存在として位置づけられています。
昭和30年(1955年)に山梨県の無形文化財に指定され、さらに昭和51年(1976年)には国の重要無形民俗文化財に指定されました。この指定は、天津司舞が日本の芸能史において極めて重要な位置を占めることを国が認めたものです。
開催日時と場所
天津司舞は毎年4月の第一日曜日に執り行われます。かつては旧暦の7月19日に行われていましたが、現在は4月10日に近い日曜日に開催されています。
舞は以下の流れで進行します:
- 天津司神社(甲府市小瀬町)で九体の人形を本殿から降ろす
- 小瀬村古来の十七戸の氏子が一人一体ずつ人形を奉じる
- 道楽を奏しながら隣町の鈴宮諏訪神社(下鍛冶屋町)まで練り歩く
- 諏訪神社境内の「御船囲」で舞を奉納する
九体の人形と舞の構成
天津司舞で使用される九体の人形は、それぞれ役割が決まっています:
- ささら(2体)
- 太鼓(2体)
- 鼓(1体)
- 笛(1体)
- 鹿島(1体)
- 姫(1体)
- 鬼(1体)
これらの人形は、胴串に頭と手をつけ、田楽衣装などをかけた等身大のものです。人形は「御船」と呼ばれる四方形の竹囲い(幕をめぐらす)の中で舞わされます。
天津司舞の特徴と価値
天津司舞が「日本最古の人形芝居」と称される理由は、その形式と伝承の古さにあります。人形を使った神事芸能として、少なくとも450年以上の歴史を持ち、その原型を今日まで保ち続けている点が高く評価されています。
舞は単なる娯楽ではなく、神事として厳格に執り行われます。小瀬村の古来からの十七戸の家々が代々この舞の伝承に携わり、地域の絆と信仰を今に伝えています。
天津司神社の基本情報
所在地とアクセス
住所: 〒400-0836 山梨県甲府市小瀬町557
公共交通機関でのアクセス
- JR甲府駅からバスで約20分
- 最寄りのバス停から徒歩数分
自動車でのアクセス
- 中央自動車道甲府南ICから約15分
- 駐車場については事前に確認することをおすすめします
参拝時間
神社境内は基本的に自由に参拝できますが、社務所の対応時間などは事前に確認することをおすすめします。
お問い合わせ
天津司舞や神社に関する詳細な情報については、以下にお問い合わせください:
- 甲府市観光課
- 山梨県神社庁
- 山梨県観光情報サイト
天津司舞を見学する際の注意点
見学のポイント
天津司舞は年に一度、4月第一日曜日のみ開催される貴重な神事です。見学を希望される方は以下の点に注意してください:
- 開催日の確認: 毎年日付が変わるため、事前に正確な日程を確認しましょう
- 時間に余裕を持つ: 天津司神社から諏訪神社への御幸行列も見どころです
- 神事としての敬意: 写真撮影などのマナーを守りましょう
- 混雑対策: 国の重要無形民俗文化財として注目度が高いため、早めの到着をおすすめします
撮影について
神事の撮影については、主催者の指示に従ってください。フラッシュ撮影や舞の進行を妨げる行為は厳禁です。
周辺の観光スポット
鈴宮諏訪神社
天津司舞の御幸先である鈴宮諏訪神社(甲府市下鍛冶屋町)も合わせて訪れることをおすすめします。この神社は天津司舞において重要な役割を果たしており、舞が奉納される「御船囲」が設けられます。
甲府市内の文化財
甲府市には他にも多くの歴史的な神社仏閣や文化財があります。天津司神社を訪れる際には、甲府市の歴史散策も楽しめます。
天津司神社と山梨の文化
山梨県の無形文化財としての位置づけ
天津司舞は昭和30年に山梨県の無形文化財に指定されました。これは山梨県が誇る伝統芸能として、県レベルでの保護と継承が始まったことを意味します。
その後、昭和51年の国指定により、全国的にもその価値が認められることとなりました。
地域コミュニティと伝承
天津司舞の最も重要な特徴の一つは、小瀬村古来の十七戸という限られた家々によって代々伝承されてきたことです。この伝承形態は、地域の絆と伝統の継承という点で、現代社会においても重要な意味を持っています。
神社を中心とした地域コミュニティが、450年以上にわたって文化を守り続けてきた事実は、日本の地域文化の強さを示す好例と言えるでしょう。
天津司神社参拝のすすめ
日常の参拝
天津司舞の開催日以外でも、天津司神社は参拝可能です。静かな境内で、古来より伝わる神々への祈りを捧げることができます。
小瀬町の鎮守として、地域の人々の信仰を集めてきた神社の雰囲気を感じることができるでしょう。
歴史を感じる参拝
天津司神社を訪れる際には、以下の点に注目してみてください:
- 九曜の星の神紋
- 社殿の建築様式
- 境内の雰囲気
- 周辺の小瀬町の風景
これらを通じて、古来より神々が舞い降りたとされる地の歴史と伝統を感じることができます。
天津司神社の文化財としての価値
日本文化史における位置づけ
天津司舞は「わが国最古の人形芝居」「偶人劇の始祖的存在」として、日本の芸能史・文化史において極めて重要な位置を占めています。
人形を使った芸能は、その後の文楽(人形浄瑠璃)などにも影響を与えたとされ、日本の伝統芸能の源流の一つとして研究されています。
無形文化財としての保護と継承
国の重要無形民俗文化財に指定されたことにより、天津司舞は公的な保護と支援を受けることとなりました。しかし、その継承には地域の人々の努力が不可欠です。
現在も小瀬町の人々によって大切に守られている天津司舞は、有形の建造物とは異なる「生きた文化財」として、次世代への継承が続けられています。
天津司神社を訪れる意義
天津司神社は、単なる観光スポットではありません。ここには、日本の文化の源流の一つがあり、450年以上にわたって地域の人々が守り続けてきた信仰と伝統があります。
特に4月第一日曜日の天津司舞は、一年に一度しか見ることのできない貴重な神事芸能です。日本最古の人形芝居を目の当たりにすることは、日本文化の深さと地域の絆の強さを実感できる貴重な体験となるでしょう。
山梨県を訪れる際には、ぜひ天津司神社に足を運び、古来より伝わる神事芸能の世界に触れてみてください。そこには、現代にも息づく日本の伝統文化の真髄があります。
まとめ
天津司神社(山梨県甲府市小瀬町)は、国の重要無形民俗文化財「天津司舞」を伝承する歴史ある神社です。日本最古の人形芝居として、450年以上の歴史を持つこの神事芸能は、日本文化史上不滅の貴重な文化遺産として高く評価されています。
毎年4月第一日曜日に開催される天津司舞は、九体の人形が天津司神社から鈴宮諏訪神社まで御幸し、神事として舞が奉納されます。小瀬村古来の十七戸によって代々守られてきたこの伝統は、地域の絆と日本の伝統文化の継承の素晴らしい例となっています。
天津司神社を訪れることは、日本の文化の源流に触れ、地域に根ざした信仰と伝統の力を感じる貴重な機会となるでしょう。
