元三島神社(東京都台東区)完全ガイド|鶯谷駅前の歴史と正岡子規ゆかりの神社
東京都台東区根岸に鎮座する元三島神社は、JR鶯谷駅北口の目の前という都心の立地ながら、700年以上の歴史を持つ由緒ある神社です。鎌倉時代の武将・河野通有と弘安の役にまつわる創建の歴史、文豪・正岡子規との深い縁、そして下谷七福神の一つとして親しまれる現在の姿まで、元三島神社の魅力を徹底的にご紹介します。
元三島神社の基本情報とアクセス
所在地と交通アクセス
所在地
〒110-0003 東京都台東区根岸1-7-11
アクセス
- JR山手線・京浜東北線「鶯谷駅」北口より徒歩1分(駅ホームからも社殿が見えます)
- 東京メトロ日比谷線「入谷駅」より徒歩約10分
鶯谷駅北口を出ると正面に見える立地の良さが特徴で、都心にありながら参拝しやすい神社として知られています。駅前の歓楽街を抜けた一角に静かに佇む境内は、喧騒から離れた落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
社務所受付時間
通常9:00~17:00(参拝自体は24時間可能)
電話番号
TEL: 03-3873-4976
FAX: 03-3873-6535
御祭神と御神徳
大山祇命(おおやまづみのみこと)
元三島神社の御祭神は大山祇命です。大山祇命は日本神話において山の神、海の神として崇められる神様で、特に以下の御神徳があるとされています。
- 武運長久・勝運:弘安の役での河野通有の戦勝に由来
- 航海安全:瀬戸内海の海運を守護する神として
- 家内安全・商売繁盛:地域の鎮守として
- 諸願成就:あらゆる願いを叶える神として
大山祇命は愛媛県今治市の大三島に鎮座する大山祇神社を総本社とし、全国の三島神社の御祭神として広く信仰されています。
元三島神社の創建と歴史
弘安の役と河野通有の戦勝祈願
元三島神社の創建は弘安年間(1278年~1288年)に遡ります。その由来は鎌倉時代の元寇、特に弘安四年(1281年)の弘安の役と深く結びついています。
鎌倉幕府の御家人であった河野通有(こうのみちあり)は、伊予国(現在の愛媛県)の武将で、瀬戸内海の水軍を率いる勇将でした。弘安の役に出陣するにあたり、河野通有は地元の大山祇神社に必勝の祈願を捧げました。神恩加護を仰いだ河野通有は、元軍との戦いで武功赫々たる活躍を見せ、見事に勝利を収めて帰国しました。
霊夢と上野山への分霊鎮座
帰国後、河野通有は夢の中で大山祇命からお告げを受けます。そのお告げは「武蔵国豊島郡に大山祇命の分霊を勧請せよ」というものでした。
河野通有はこの霊夢に従い、上野山中にあった河野氏の館に大山祇神社の分霊を鎮座させました。これが元三島神社の始まりです。当時の上野山は現在の上野公園一帯を指し、広大な山林地帯でした。
慶安三年の移転と「元三島」の名の由来
創建から約370年後の慶安三年(1650年)、江戸幕府による上野の都市開発に伴い、神社は立ち退きを命じられます。幕府から代替地として与えられたのが、現在の台東区根岸にあたる金杉村でした。
この移転に際して、地元の金杉・根岸の村民たちから「氏神様が地元を離れてしまうのは誠に不都合である」という声が高まりました。何度も協議を重ねた結果、かつて三島神社が鎮座していた上野の地に最も近い金杉の地に、改めて三島大明神の御神霊をお迎えすることが決定されました。
この際、当地に古くからあった熊野社と合祀する形をとり、新たな社殿が整えられました。こうして成立したのが現在の「元三島神社」です。「元」という字は、元々上野山にあった三島神社という意味を表しています。
三つの三島神社
台東区には元三島神社を含め、「三島神社」の社号を持つ神社が3社鎮座しています。
- 元三島神社(根岸):本記事で紹介する神社
- 三島神社(下谷):下谷地区に鎮座
- 本社三島神社:台東区内に鎮座
これら3社はいずれも同一の御由緒を有し、元々は上野山に鎮座していた1つの神社が起源とされています。移転の際の経緯や地域の事情により、3つの神社に分かれて現在に至っています。
正岡子規と元三島神社の深い縁
子規庵と根岸の地
元三島神社は、明治時代の俳人・歌人である正岡子規ゆかりの地としても知られています。正岡子規は明治27年(1894年)から亡くなる明治35年(1902年)まで、根岸の地に居を構えました。この住居は「子規庵」として現在も保存されており、元三島神社から徒歩圏内にあります。
正岡子規の家系は伊予国(愛媛県)の出身で、伊予水軍の末裔という家柄でした。河野氏と同じ伊予の地にルーツを持つ子規にとって、河野通有が創建した元三島神社は特別な意味を持っていたと考えられます。
子規の句碑
元三島神社の境内には、正岡子規が詠んだ句を刻んだ句碑が立っています。
「木槿咲て 絵師の家問ふ 三嶋前」
この句は、木槿(むくげ)の花が咲く季節に、三島神社の前で絵師の家を訪ねる様子を詠んだものです。子規が根岸界隈を散策する日常の一コマが切り取られており、当時の風景と子規の生活を今に伝える貴重な文化財となっています。
根岸は明治時代、文人墨客が多く住む文化的な地域として知られており、子規もこの地で多くの作品を生み出しました。元三島神社はそうした文化的背景を持つ根岸の象徴的存在でもあります。
境内の見どころと文化財
社殿と境内の雰囲気
鶯谷駅北口から歓楽街の路地を抜けると、元三島神社の境内が静かに佇んでいます。都心の喧騒とは対照的な落ち着いた空間が広がり、参拝者を迎えてくれます。
社殿は江戸時代の様式を残しつつ、適切に維持管理されており、歴史の重みを感じさせます。境内はコンパクトながらも清潔に保たれ、地域の人々に愛されている様子が伝わってきます。
正岡子規の句碑
前述の通り、境内には正岡子規の句碑が立っています。文学ファンや俳句愛好家にとっては必見のスポットです。句碑の前で子規が見た景色を想像しながら参拝するのも、元三島神社ならではの楽しみ方です。
下谷七福神の寿老神
元三島神社は下谷七福神の一つとして、寿老神(じゅろうじん)を祀っています。寿老神は長寿と幸福の神様として信仰され、毎年正月には七福神巡りの参拝者で賑わいます。
下谷七福神は以下の7つの寺社で構成されています。
- 英信寺(大黒天)
- 法昌寺(毘沙門天)
- 寿永寺(布袋尊)
- 元三島神社(寿老神)
- 飛不動尊(恵比寿神)
- 入谷鬼子母神(福禄寿)
- 弁天院(弁財天)
正月の七福神巡りでは、各寺社を巡って御朱印や色紙を集める参拝者が多く訪れます。
御朱印・授与品情報
通常の御朱印
元三島神社では、通常の御朱印を授与しています。社務所の受付時間内に参拝すれば、丁寧に書いていただけます。
初穂料:通常300円~500円程度
御朱印には「元三島神社」の墨書きと朱印が押され、参拝の記念として多くの参拝者に親しまれています。
限定御朱印
例大祭や正月などの特別な時期には、限定御朱印が授与されることがあります。詳細は公式ホームページやSNS(X/旧Twitter)で事前に確認することをおすすめします。
御朱印帳
オリジナルの御朱印帳も授与されている場合があります。デザインや在庫状況については、参拝時に社務所でお尋ねください。
授与品(お守り・お札)
元三島神社では、各種お守りやお札が授与されています。
- 永吉守:「永く吉」という縁起の良い名前のお守りで、参拝者に人気があります。ペットの名前にちなんでお守りにする方もいるそうです。
- 勝守:弘安の役での戦勝に由来する勝運のお守り
- 家内安全守:家族の安全と幸せを願うお守り
- 交通安全守:通勤・通学の安全を守るお守り
その他、季節や行事に応じた授与品も用意されています。
年中行事と例大祭
例大祭(5月)
元三島神社の最も重要な祭礼が、毎年5月に斎行される例大祭です。2025年は5月10日(土)~11日(日)に開催予定です。
例大祭では、御神輿の渡御や神楽の奉納などが行われ、根岸の鎮守として地域の人々が集まります。普段は静かな境内も、この時期は多くの参拝者と祭りの活気で賑わいます。
初詣・正月行事
正月には初詣の参拝者が訪れます。特に下谷七福神巡りの一環として、多くの方が寿老神に参拝します。元日から三が日にかけては、新年の無事と幸福を祈る参拝者で賑わいます。
その他の年中行事
- 節分祭(2月):豆まきなどの行事
- 七五三詣(11月):子どもの成長を祝う参拝
- 月次祭:毎月定期的に行われる祭事
詳細な日程は公式ホームページや社務所でご確認ください。
元三島神社の旧社格と神社庁
元三島神社の旧社格は村社です。江戸時代から明治時代にかけて、金杉村(現・根岸周辺)の鎮守として地域の信仰を集めてきました。
現在は東京都神社庁に所属しており、台東区の神社として適切な管理・運営が行われています。東京都神社庁のホームページにも元三島神社の情報が掲載されており、正式な神社として認められています。
周辺の見どころと観光スポット
子規庵
元三島神社から徒歩数分の距離にある子規庵は、正岡子規が晩年を過ごした住居です。現在は記念館として公開されており、子規の遺品や資料が展示されています。元三島神社とセットで訪れることで、根岸の文化的歴史をより深く理解できます。
住所:東京都台東区根岸2-5-11
開館時間:10:30~12:00、13:00~16:00(木・金・土・日・祝日のみ開館)
入館料:大人500円
鶯谷駅周辺
鶯谷駅周辺は歓楽街として知られていますが、同時に歴史的な寺社も点在するエリアです。元三島神社の参拝と合わせて、以下のスポットも訪れてみてはいかがでしょうか。
- 寛永寺:上野公園内にある天台宗の大寺院
- 谷中霊園:著名人の墓も多い歴史ある霊園
- 根岸・入谷地区の寺社:下谷七福神巡りのルート
上野公園
元三島神社の元の鎮座地であった上野山は、現在の上野公園です。上野動物園、東京国立博物館、国立西洋美術館など、文化施設が集まる東京を代表する観光スポットです。鶯谷駅から上野駅までは電車で1駅、徒歩でも15分程度です。
参拝のマナーと注意点
基本的な参拝作法
- 鳥居をくぐる前に一礼:神域に入る際の礼儀です
- 手水舎で清める:左手、右手、口の順に清めます
- 拝殿での参拝:二拝二拍手一拝が基本です
- 静かに参拝:周囲への配慮を忘れずに
写真撮影について
境内での写真撮影は一般的に可能ですが、社殿内部や祭事中の撮影は控えましょう。また、他の参拝者への配慮も必要です。SNSへの投稿時は、他の参拝者が写り込まないよう注意してください。
駐車場について
元三島神社には専用の駐車場がありません。鶯谷駅から徒歩1分という立地のため、公共交通機関の利用をおすすめします。車で訪れる場合は、近隣のコインパーキングを利用してください。
公式情報とお問い合わせ
公式ホームページ
元三島神社の公式ホームページが開設されています。最新の行事情報や御朱印情報などが掲載されていますので、参拝前にチェックすることをおすすめします。
公式サイト:https://motomishima.jp/
公式SNS(X/旧Twitter)
元三島神社は公式Xアカウント(@MotomishimaS)を運営しています。日々の境内の様子や行事のお知らせなどが投稿されていますので、フォローしておくと便利です。
お問い合わせ先
住所:〒110-0003 東京都台東区根岸1-7-11
電話:03-3873-4976
FAX:03-3873-6535
参拝に関するご質問や御朱印の在庫確認などは、電話でお問い合わせください。
まとめ:元三島神社の魅力
元三島神社は、鎌倉時代の弘安の役から続く700年以上の歴史、河野通有の戦勝祈願という劇的な創建の由来、正岡子規との文学的な縁、そして下谷七福神の一つとしての現在の姿まで、多層的な魅力を持つ神社です。
鶯谷駅北口から徒歩1分という都心の立地ながら、静かで落ち着いた境内は、日常の喧騒から離れて心を落ち着ける場所として、地域の人々に愛され続けています。
歴史好きの方、文学ファンの方、御朱印集めをされている方、七福神巡りをされる方、それぞれの目的で訪れても満足できる神社です。上野や浅草などの観光と合わせて、ぜひ元三島神社にも足を運んでみてください。
大山祇命の神恩加護を仰ぎながら、鎌倉時代から続く歴史の重みと、正岡子規が愛した根岸の風情を感じることができるでしょう。参拝を通じて、武運長久、諸願成就の御神徳をいただき、日々の生活に活力を得られることを願っています。
