宇波刀神社

宇波刀神社
住所 〒408-0204 山梨県北杜市明野町上手937
公式サイト http://www.yamanashi-jinjacho.or.jp/intro/search/detail/6075

宇波刀神社完全ガイド:山梨県に点在する式内社の歴史と見どころ

宇波刀神社(うわとじんじゃ)は、平安時代の延喜式神名帳に記載された由緒ある式内社です。山梨県内には複数の宇波刀神社が存在し、それぞれが式内社の論社として古い歴史を持っています。本記事では、各宇波刀神社の詳細な情報、歴史的背景、文化財、そして参拝の際の見どころまで、包括的に解説します。

宇波刀神社とは

宇波刀神社は、延喜式神名帳の甲斐国巨麻郡(こまぐん)に記載された式内社です。「宇波刀」という社名の由来については諸説ありますが、古代からこの地域で信仰を集めてきた神社であることは間違いありません。

現在、山梨県内には主に三つの宇波刀神社が存在し、いずれも式内社の論社とされています。それぞれが独自の歴史と特徴を持ち、地域の信仰の中心として今日まで守られてきました。

延喜式神名帳と式内社の意義

延喜式神名帳は、平安時代中期の延長5年(927年)に編纂された全国の神社一覧です。当時、朝廷から官社として認められた神社のみが記載されており、式内社に列せられることは神社の格式と由緒の証明となります。甲斐国には20座の式内社が記載されており、宇波刀神社はその一つとして重要な位置を占めています。

北杜市明野町の宇波刀神社(旧郷社)

基本情報

北杜市明野町上手に鎮座する宇波刀神社は、三つの論社の中でも最も式内社の比定が有力とされています。旧社格は郷社で、地域の中心的な神社として崇敬を集めてきました。

  • 所在地: 山梨県北杜市明野町上手937
  • 御祭神: 建御名方命(たけみなかたのみこと)
  • 旧社格: 郷社
  • 例祭日: 10月17日

創建と歴史

創建年代は非常に古く、正確な時期は不詳ですが、延喜式神名帳に記載されていることから、少なくとも平安時代初期には既に存在していたと考えられます。

社伝によれば、寛治年間(1087年~1094年)に新羅三郎義光(源義光)が再建し、その後保元元年(1156年)に鎌田兵衛尉正清が再建したとされています。この鎌田氏との関係は深く、中世には鎌田庄十六七か村の惣社氏神として、広範囲の信仰を集めました。

貞観8年(866年)3月28日には従五位上の神階を授けられたという記録もあり、古代から朝廷との関わりが深かったことがうかがえます。

文化財:貞観6年銘石鳥居

北杜市明野町の宇波刀神社で最も注目すべき文化財が、参道入り口に立つ石鳥居です。この石鳥居は山梨県指定文化財に指定されており、柱には貞観6年(864年)の銘が刻まれています。

貞観6年は平安時代初期にあたり、この石鳥居は現存する日本最古級の石鳥居の一つとして極めて貴重です。背が低く重厚な造りで、古代の石造技術を今に伝える重要な遺構となっています。

1971年(昭和46年)4月8日に山梨県の有形文化財(建造物)に指定され、現在も良好な状態で保存されています。この鳥居をくぐって参拝することで、千年以上の歴史を肌で感じることができます。

見どころ

  1. 貞観銘石鳥居: 平安時代の石造技術を今に伝える県指定文化財
  2. 社殿: 落ち着いた雰囲気の本殿と拝殿
  3. 境内の雰囲気: 静謐で歴史を感じさせる空間
  4. 諏訪信仰との関係: 建御名方命を祀る諏訪信仰の痕跡

北杜市長坂町の宇波刀神社(旧指定村社)

基本情報

北杜市長坂町上条(旧円野村)に鎮座する宇波刀神社も、式内社の論社の一つです。こちらは旧社格が村社で、地域の氏神として親しまれてきました。

  • 所在地: 山梨県北杜市長坂町上条(円野地区)
  • 御祭神: 建御名方命
  • 旧社格: 村社
  • 別称: 諏訪大明神

創建伝承

創祀年代は不詳ですが、一説には養老2年(718年)の創建とも伝えられています。社伝によれば、第18代反正天皇の皇女・円比女(えんぴめ)がこの地に封を受け、諏訪大明神を勧請して守護神として崇め奉ったのが始まりとされています。

元来は諏訪明神と称しており、諏訪信仰との結びつきが強い神社です。貞観8年3月28日には従五位上を授けられたという記録があり、明野町の宇波刀神社と同様の由緒を持つことがわかります。

特徴

この神社は「宇波刀神社諏訪大明神」と称され、式内社としての格式と諏訪信仰の両面を持つ独特の性格を有しています。円比女伝承は他の論社には見られない特徴で、皇族との関わりを示す貴重な伝承です。

甲府市宮原町の宇波刀神社(旧郷社)

基本情報

甲府市宮原町に鎮座する宇波刀神社は、江戸時代末まで八幡宮と称していた神社です。

  • 所在地: 山梨県甲府市宮原町
  • 御祭神: 応神天皇、仲哀天皇、神功皇后
  • 旧社格: 郷社
  • 旧称: 八幡宮

歴史と特徴

社伝によると、寛治年間に新羅三郎義光が勧請し、保元元年に鎌田兵衛尉正清が再建したとされています。この由緒は明野町の宇波刀神社と共通しており、両社の関係性が注目されます。

ただし、この神社の祭神は八幡神(応神天皇、仲哀天皇、神功皇后)であり、他の二社が建御名方命(諏訪神)を祀るのとは異なります。江戸時代まで八幡宮と称していたことから、中世以降に八幡信仰が強まったと考えられます。

甲府駅から南へ約6kmの位置にあり、三つの論社の中では最も甲府市街地に近い立地です。

宇波刀神社の論社問題

延喜式神名帳に記載された「宇波刀神社」がどの神社を指すのかについては、古くから論争があります。主な論社は上記の三社ですが、それぞれに式内社である根拠があります。

各論社の比定根拠

北杜市明野町説:

  • 貞観6年銘の石鳥居という物的証拠
  • 貞観8年の神階授与記録との整合性
  • 地理的に巨麻郡の中心部に位置

北杜市長坂町説:

  • 円比女伝承という独自の創建由緒
  • 養老2年創建説による古さ
  • 諏訪信仰との強い結びつき

甲府市宮原町説:

  • 新羅三郎義光、鎌田正清との関係
  • 郷社としての格式
  • 甲府盆地における立地

現在では、貞観銘石鳥居を持つ明野町の宇波刀神社が最も有力視されていますが、各社とも長い歴史と信仰を持つ由緒ある神社であることに変わりはありません。

諏訪信仰と宇波刀神社

宇波刀神社の特徴の一つは、諏訪信仰との深い関わりです。明野町と長坂町の二社は建御名方命を祭神とし、諏訪大明神とも称されてきました。

建御名方命は『古事記』に登場する神で、諏訪大社の主祭神として知られています。甲斐国は信濃国(長野県)に隣接し、古くから諏訪信仰が伝播していました。特に新羅三郎義光は諏訪氏との関係が深く、義光による勧請・再建の伝承は、中世における諏訪信仰の広がりを示しています。

新羅三郎義光と鎌田氏の関係

複数の宇波刀神社の由緒に登場する新羅三郎義光(源義光、1045年~1127年)は、平安時代後期の武将で、源氏の一族として甲斐国との関わりが深い人物です。

義光は後三年の役(1083年~1087年)で活躍し、その後甲斐国に影響力を持ちました。寛治年間の勧請・再建伝承は、この時期の義光の活動と符合します。義光の子孫は甲斐源氏として発展し、後の武田氏につながります。

鎌田兵衛尉正清は、保元元年(1156年)に宇波刀神社を再建したとされる人物です。鎌田氏は甲斐国で勢力を持った一族で、宇波刀神社は「鎌田庄十六七か村の惣社氏神」として、広範囲の信仰を集めました。中世の宇波刀神社は、鎌田氏の氏神的性格を強めていったと考えられます。

祭礼・行事

宇波刀神社の例祭は、多くの論社で10月17日に執り行われます。秋の収穫に感謝し、地域の安寧を祈る伝統的な祭礼です。

例祭では、神事の後に神楽の奉納や地域住民による祭礼行事が行われることがあります。地域によっては獅子舞や太鼓などの伝統芸能が継承されており、地域文化の保存にも重要な役割を果たしています。

交通アクセス

北杜市明野町の宇波刀神社

  • 電車: JR中央本線韮崎駅からバスまたはタクシーで約20分
  • : 中央自動車道韮崎ICから約15分、駐車場あり

北杜市長坂町の宇波刀神社

  • 電車: JR中央本線長坂駅から徒歩約20分
  • : 中央自動車道長坂ICから約10分、駐車スペースあり

甲府市宮原町の宇波刀神社

  • 電車: JR中央本線甲府駅から南へ約6km、バスまたはタクシー利用
  • : 中央自動車道甲府南ICから約10分、駐車可能

参拝のポイント

明野町の宇波刀神社を訪れる際

  1. 石鳥居の観察: 貞観6年銘をじっくり確認しましょう。千年以上前の石造技術に触れる貴重な機会です。
  2. 静かな参拝: 郷社としての格式を持つ境内で、心静かに参拝を。
  3. 周辺の歴史探訪: 明野町周辺には古墳や遺跡も多く、歴史散策に最適です。

長坂町の宇波刀神社を訪れる際

  1. 諏訪信仰の痕跡: 諏訪大明神としての性格を感じながら参拝を。
  2. 円比女伝承: 皇女との関わりという独特の由緒に思いを馳せましょう。
  3. 自然環境: 周辺の自然豊かな環境も魅力です。

甲府市の宇波刀神社を訪れる際

  1. 八幡信仰: 八幡神を祀る独特の性格を理解して参拝を。
  2. アクセスの良さ: 甲府市街地に近く、他の観光スポットと組み合わせやすい立地です。
  3. 地域の氏神: 地域に根ざした信仰の姿を感じることができます。

近隣のおすすめスポット

明野町周辺

  • 明野のひまわり畑: 夏季には一面のひまわりが楽しめる観光名所
  • 浅尾ダイコンの里: 地域の特産品である浅尾ダイコンの産地
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長坂町周辺

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  • 三分一湧水: 名水百選に選ばれた湧水地
  • 八ヶ岳自然文化園: 八ヶ岳の自然を楽しめる施設

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宇波刀神社を巡る歴史散策コース

宇波刀神社の三つの論社を巡る歴史散策は、山梨県の古代から中世の歴史を体感できる貴重な体験です。

おすすめ1日コース:

  1. 午前: 甲府市の宇波刀神社参拝 → 武田神社見学
  2. 昼食: 甲府市内でほうとうなど郷土料理
  3. 午後: 明野町の宇波刀神社参拝(石鳥居を重点的に)
  4. 夕方: 長坂町の宇波刀神社参拝

車での移動が便利ですが、各神社の間は30分~1時間程度の距離です。

式内社としての価値

宇波刀神社が式内社として持つ価値は、単なる歴史的な格式だけではありません。延喜式神名帳に記載されたということは、平安時代に朝廷から公認された神社であり、古代の地域支配や信仰の実態を知る上で重要な手がかりとなります。

甲斐国の式内社20座は、古代甲斐国の政治的・宗教的な中心地を示しており、宇波刀神社はその一つとして巨麻郡における重要な拠点でした。貞観年間の神階授与は、朝廷との関係の深さを物語っています。

文化財としての保存と継承

明野町の宇波刀神社が所有する貞観銘石鳥居は、山梨県内でも最古級の石造物として、学術的にも極めて重要です。このような文化財の保存には、地域住民の努力と行政の支援が不可欠です。

現在、各宇波刀神社では、地域の氏子や崇敬者によって維持管理が行われています。少子高齢化が進む中、伝統的な祭礼の継承や境内の整備には課題もありますが、歴史的価値の高い神社として、次世代への継承が期待されています。

お問合せ先

宇波刀神社に関する詳細な情報や参拝に関するお問い合わせは、以下にご連絡ください。

山梨県神社庁

  • 山梨県内の神社を包括する組織として、各神社の情報を提供しています。
  • 公式ウェブサイトでは県内神社の紹介や神社・神道に関する情報をダウンロード可能です。

各市町村観光協会

  • 北杜市観光協会: 明野町・長坂町の宇波刀神社に関する情報
  • 甲府市観光協会: 甲府市の宇波刀神社に関する情報

まとめ

宇波刀神社は、延喜式神名帳に記載された由緒ある式内社として、山梨県の歴史と信仰を今に伝える重要な神社です。明野町、長坂町、甲府市の三つの論社は、それぞれが独自の歴史と特徴を持ち、古代から中世、近世を経て現代まで、地域の人々の信仰を集めてきました。

特に明野町の貞観銘石鳥居は、平安時代の貴重な文化財として必見の価値があります。諏訪信仰や八幡信仰との結びつき、新羅三郎義光や鎌田氏との関係など、宇波刀神社を通じて山梨県の多層的な歴史を読み解くことができます。

山梨県を訪れる際には、ぜひ宇波刀神社に足を運び、千年以上の歴史が息づく神域で、静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。式内社としての格式と、地域に根ざした素朴な信仰の両面を持つ宇波刀神社は、日本の神社文化の奥深さを体感できる貴重なスポットです。

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